ラジオ体操——最初の先生は,地域だった

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ラジオ体操——最初に教えてくれたのは地域

この夏,ほぼ毎朝ラジオ体操をする機会があった。久しぶりでも,音楽が流れると自然にからだが動く。ふと「最初は誰に教わったのか」と考えると,小学校の授業より前に,夏休みの朝の公園で地域の人たちと一緒にやっていたことを思い出した。私にとっての出発点は,学校ではなく地域だったのだと思う。

公園で覚えた型

開始の合図が流れ,最初は伸びの運動,次に腕を振って脚を曲げて——順番は変わらない。誰かが細かく説明しなくても,周りに合わせているうちに,動きは自然と身についた。ラジオ体操は「見て真似る」,「繰り返す」で覚える典型であり,からだで覚える学び方の良さを実感できる。

地域の大人たちの支え

準備や声かけをしてくれる人,カードにハンコを押してくれる人,列に入れない子にさっと場所を作る人。役割は厳密ではないが,ゆるやかな支えがあった。こうした関わりは,年齢や立場を超えて同じ時間を共有する体験になり,「地域で学ぶ」感覚をつくっていた。

習慣としての効果

数分の運動で体力が劇的に上がるわけではないが,起き抜けのこわばりがほぐれ,呼吸が落ち着く。決まった時間に同じ動きをすること自体が,生活のリズムづくりに役立つ。特に在宅時間が増えた今,短時間でも続けやすい整え方として有効だと感じる。

大人になってからのラジオ体操

子どものころはハンコや皆勤が楽しみだった。今は,背中や肩の固さを取る目的で行う。動機は変わっても,効果は変わらない。外に出られない日は,音源を再生してその場で深呼吸と基本動作だけでも行うと,気分転換になる。

変わらない「型」の安心感

順番も音楽も一定で,迷いが少ない。決まった型があると,始めるハードルが下がり,続けやすい。小さな達成が積み重なることで,ほかの習慣づくりにも波及しやすい。

これからの学びへの示唆

ラジオ体操は,ことばの説明より「場」と「反復」で身につく。デジタルの学びでも,完璧な説明より,まず手を動かせる場や,試しながら続けられる仕組みが有効な場合もある。ラジオ体操のやり方は,そのまま習慣化や基礎練習の設計に応用できる。

メモ——続けるためのヒント

  • 深呼吸だけでもよい日を作る。ハードルを下げる
  • 痛みがある方向は小さく動かす。無理をしない
  • 同じ音源を同じ時間に流す。開始の合図にする
  • 家族や近所の人と一緒にやる。人との約束は継続の助け
  • カレンダーに〇をつける。見える記録で達成感を残す

おわりに

私にラジオ体操を最初に教えたのは,先生ではなく地域の場だった。決まった型を,みんなで同じ時間に繰り返す——その素朴な仕組みが,今も役に立っている。これからも,できる範囲で続けていきたい。

執筆者

横山 成彦のアバター 横山 成彦 情報学教育研究会 代表

情報学教育研究会 代表,情報学教育研究所 所長。大阪学院大学高等学校 情報管理室 室長/株式会社SFC。修士(教育学)。専門は情報学教育,情報教育,情報科教育,学校教育の情報化。

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